神戸市主催「長田くる・り」 トークイベント「建築士に聞く~リノベしてどうでした?~」

概要

2025年3月1日14時から  トークイベント「建築士に聞く~リノベしてどうでした?~」が開催されます。そこでは、イベント「長田くる・り」で見学できる空き家の再生事例をもとにお話しします。(上記の2つのイベントは神戸市・長田区が主催)

 

以下内容

建築家:角野史和氏(HOUSE NEXT DOOR、JSR)

福永裕美氏(丸五SpiceUp)

高橋利郎氏(こまどりの家)

ファシリテーター:松原氏(スタヂオカタリスト)

弊社からは 高橋利郎が 登壇しました。

こまどりの家の2階で行われました。

自己紹介

・どういう想いで建築士としての仕事に携わっているか

業務におけるコンセプトとしては、以下の3つになります。

1. 安心して使える耐震補強

神戸市すまいの耐震診断員 兵庫県簡易耐震診断員がとして、長年数多くの木造及びRC造の建築物の構造補強リノベーションを行ってきました。古民家等伝統木造建築物の構造補強リノベーションを行えることを当社の大きな特徴としています。

・地震に不安があり、古い建物を耐震補強とともにリノベーションを行いたい人。
・床が傾斜していたり、傾いている木造建築物及び伝統的木造建築物である古民家等を基礎や梁、床、壁を補強増設してリノベーションしたい人。
・既存の建物が、梁や壁や床を撤去されたりして、他社では対応できないといわれた鉄筋コンクリート造の建築物を、床や梁を復旧し、壁を増設してリノベーションしようと考えている人等。

こういったご相談の方に対して、特にお力になれると思います。

2.間取プランニングの提案力に自信あります。

・壁や柱や床を撤去して、キッチンとダイニングとリビングが一体となったリノベーションプランを検討している人
・空き家を 近隣の状況を踏まえて、需要のある賃貸住宅に転用しようと考えている人
・寝室を拡張したり、既存の平面プランを大きく変更するリノベーションを検討している人

こういったご相談の方に対しても十分にお力になれると思います。
間取りを変更する場合には、耐震構造補強と平面計画とを行い 最後はパースにてイメージを提案いたします。

3.空間の喜びを感じられる設計監理

住宅を設計する際には、当然考えるべき、回遊性のある動線計画、収納計画、使い勝手の良いキッチン計画、快適な室内環境を維持する設備計画、地震に強い構造計画といった機能的な事を踏まえた上で、風や光や緑といった自然を取り入れ、空間の喜びを感じることのできる住空間を創造する事を志としています。また、積極的に街並みの美しさに参加できるように、四季の変化が感じることのできる庭、テラス、街路を造り、屋内と屋外の空間を緩やかに繋げ、人が住んでいたことが記憶に残るような空間を創造していくことを志としています。

・普段どんな依頼が多いか、施主とどんな進め方をするか

古民家や個人の住宅等、木造やRC造の構造体を補強して、耐震性を確保しながらのリノベーション工事の設計監理業務が多いです。

その他、幼稚園等の新築や改修も会社でよく行っています。施主とは、ヒアリングシートを通して、現在の住居の不満点や満足している所を聞き、良い空間のイメージを共有できるように設計を行います。どのような骨組みの中で、生活したり働いているのかがわかるように建築空間をつくりたいとは常日頃から考えています。建築の表現としての重要な要素のひとつが 構造表現 というのがありまして、建物が 構造体として美しい ということに ひとつの重点を置いて活動しています。

・今まで携わった事例紹介など

一連の会社の業務案件をあげています。

その他変わった仕事としては、 RCの改修

RC 鉄筋コンクリート造の耐震補強の流れ

 

お寺の改修

寺院の耐震診断と構造補強 その1 診断の指針と常時微動測定

□今回の物件紹介

・購入に至るきっかけと 改修前の状況

その土地の縁者の紹介で、使わなくなった古家があるということで確認させてもらい、会社で購入を決めました。建物は、暗く古い感じがし、構造的にも不安が多くのこるものでしたが、我々がリノベすれば、明るく開放的で安心感のあるよいものに仕上がるだろうという印象がありました。その他駅に近いのも魅力ではありました。

・物件の最初の状態

①最初の状態

既存平面図

既存外観パース

1階の改修前の間取り図パース

 

南東より見た改修前のパース

北東より見た 改修前のパース

 

改修前の北西よりみたパース

台所部分の写真

 

台所より和室をみた写真

和室の写真

改修後 キッチンとなった場所の 改修前の写真

改修後土間となった場所の 改修前の写真

改修後 土間部分の写真

改修前の2階の写真

・施主の思いをどうくみ取ったか

施主は、弊社ですが、駒ヶ林というエリアにどう賑わいを演出できるかというのに焦点をおいた施設の設計を心掛けました。具体的には、以前の所有者の昼食会を行っていた場所という利用形態の歴史を受け継ぎ、皆で仲良く食事ができる場所というのが大きなコンセプトにありました。

・改修方法

①周辺の環境

 

(グーグルマップより)

エリアの特徴としては、源平の合戦の頃より存在する港町、漁師町で、路地のある古い町並みが印象となっています。地下鉄駒ヶ林駅からは 近く、ホームセンターアグロガーデンがすぐ近くに存在しており、生活するには利便性の良い土地です。最も大きな特徴は、漁業組合があり、養殖ではない天然の魚をとって生計をたてている漁師のいる港が存在するということです。また銭湯が、近くに多く、銭湯巡りなども楽しめる場所となっています。デメリットとしては、地下鉄駒ヶ林駅のすぐ南を東西に走る6間道より南側には 人の流れができないため、なかなか駒ヶ林まで人がおりてこないということがあろうかと思います。(駒ヶ林エリアが活性化するには 港等がもっと盛り上がり 人の流れが生まれるということが重要であろうかと思います。)

②どのような用途の施設が必要なのか 調査

住宅としては、賃貸仲介業者大手 LIFULLHOME‘Sさんのサイトより検証しますと50-60m2のファミリー向けの広さは供給過多の状況にある一方で、30-35m2のやや広めの単身向けの広さの住宅は供給不足の状態であることがわかってきました。家賃としては、月額6万円ぐらいで探している層が最も多いようでした。

土間部分を共用部として、4つ住宅が存在している案も検討しています。土間が存在しているため、アグロガーデンでモノを購入してDIYをする層にはうける可能性があるという設計案です。屋根の勾配が南北についているため、主屋を南北に3つ割って設計する案となっています。

その他 詳しくはこちらに掲載しています。

木造建築リノベーション  空き家の再生 プラン提案 シェハウス案と共同住宅案

但し、これで、概算見積をとりますと、かなりの金額になることが想定され、会社の業務としては 扱いづらいものになります。また木造長屋のため、防火の事に関して、所有者としては、少し心配となることも考えられます。

その他、需要としては、民泊や旅館というのも考えられますが、工業地域のため旅館は難しいエリアとなります。民泊は、港と関連付けて考えると非常に面白いものになる可能性がありますが、未だ、外国人等が、神戸中心部から駒ヶ林にまで下りてくる力は弱いということが考えられます。新長田にWACCAというシングルマザーを中心とした団体があり、シングルマザーシェアハウスというのも考えましたが、施設として、こどもの食事の面倒を見る必要があるようで、こちらも運営者がいないということで断念致しました。よって、単体で改修して、フレキシブルな用途につかえるような施設をとりあえず作ってみて、あとは、使う人にお任せするような案が良いと考えました。

③改修方法

既存の建物を大きく プラン変更を行い、耐震性の強化とともに、人が集まって食事がとれたり、色々なイベントが行える複合施設として、設計を行いました。

改修前の間取り平面図

改修後の平面図

2階平面図

全体のイメージパース

耐震診断を行い、耐震補強計画をたてて、ベタ基礎とし、壁を補強して、1階の天井と2階の床も補強して、全体的に構造体を強くし、建物を再生しています。

・工夫したこと(見てほしいポイント)

古民家の1本ものの梁です。

 

屋根部分を透明のポリカを一部使用して、暗かった以前の建物を明るいものにしました。門も以前のものが立派でしたのでそれを残すように考えました。

カウンターキッチンとして、皆が集まって食事のできる場所を作りました。

カウンターキッチンは アグロガーデンで購入した9千円の単板を加工して作っています。

 

こちらのテーブルも アグロで購入した単板を加工しています。

 

・改修後の使われ方(改修してよかったと思うことなど)

以前の入居者さまが 想定外の使用をしてくださっていました。2階をには、ベッドを多数おいて マッサージをしていました。

その他、自分史を様々な人に作ってもらい、それを発信する場所を設ける会社さんが、借りたいという要望や、1階で住んで2階を自分の会社の商品にして売るということで借りたいという要望、1階を3Dプリンター等を置いて家具製作をする場にしたいという要望、本格的に食事を出すカフェとして運営したいという要望、社会福祉施設としての要望など様々な賃貸需要による募集を得ました。基本的には、長田エリアの需要は、長田中心で回っているようでした。今回は、インターネットラジオさんが テナント様として、決まり、カフェバー、多目的スペースとして利用して頂けるということです。地域の活性化に大いに期待しています。

・物件の改修をすることになった経緯(施主さんとの関係など)

弊社所有のもので、建築家補助に応募して 申請が通り、資金計画の目途がついたために改修を行うことにしました。前述したとおり、建物の立地が駅に近いという魅力があり、また 物件を見た時には、建物自体はだいぶ古びているが、一見して、魅力的な物件に変わるだろうという予想が立っておりましたので、計画の詳細が決まり、資金計画に目途がつき次第進めていこうと考えていました。特に 門 と 2階の梁は この建物として、残すべき 魅力のあるものだと感じました。

・うれしかったこと、大変だったこと

うれしかったことは、実際に建物を色々と考えて、テナントさんが人が集まる空間として、使って頂いていることです。

大変だったことは、基礎が、石場建てとブロックと煉瓦で存在していたため、その対応策と基礎の打設に非常に苦心しました。

①石場建て

②ブロック基礎

③煉瓦基礎

煉瓦基礎を補強しています。

④2階の床の下がりと勾配の垂直補正

2階の床の下がりが大きかったため、一階で梁の補正をできる限り行っています。

筋交いをいれています。

壁には断熱材をいれています。

2階はかませモノをして、床のラインを水平にしています。

トークセッションの内容

いくつかキーワードをファシリテーターの松原さんにかいて頂き、それをもとにセッションを行いました。

角野さん キーワード

・設計と関係ない人に囲まれる。・地域の人が建築に係る。・遊びながら楽しみながら。・スナックで物件探し。

・まずは一時利用でオーナーと関係づくり。・建物前の道路空間も活用。・路地と中を曖昧に。・親の大工が息子の大工に技術継承。

福永さん

・施主と一緒に金物選び。・大切にしたいことを話し合う。・リノベ部。・自分で空き家を取得。・一人暮らしとシェアハウスの間。・今の暮らしの「文化」住宅。・大家も兼ねる。・未完成のままオープン。・費用にあわせた変更も魅力。・建物の状態が悪く、柱は浮いている建物だったがそれが面白い。

高橋利郎 キーワード

・耐震診断員 ・どのような建物の骨組みの中で活動しているのかがわかるような建築を作りたい。

・建築の表現の基本は、構造表現。

・以前の建物が暗くて古いものでしたが、我々がメスを入れれば、明るくて開放的なものになる。

・震災後人が減るが賑やかに駒ヶ林エリアがなればいいなと。

・漁港と銭湯が多いのが駒ヶ林の特徴。

・基本的なこまどりの家の使い方は、みんなで食事をする空間。

・空き家は、とりあえず、既存の建物の魅力を引き出して、リノベーションしてから、使い方は、借りる人に考えて頂くという手法。そうなると予想していない使い方が生まれる可能性。

・構造体は、RCにしろ、お寺にしろ、古民家にしろ、住宅にしろ、基本的な考え方は同じで、水平構面と鉛直構面を 構造体としてバランスよく補強して、力の流れをシンプルに考えてあげることが、リノベーションをする際に必要であろうと思います。

以上

まとめ

リノベーションを行っていくには、お客さんと建築家が お互いに 必要とする 軸 を会話の中で探っていきながら、予算に優先順位をつけてリノベーションすることが重要であろうと思います。その他、福永さんも角野さんも、所有者や、住まい手が、もっと町に開いたり、そのような開いた空間を作ったり、共有したりして、地元の人達とコミュニケーションをとって、建物単体だけでなく、エリアのリノベーションをしていけたらいいなと考えていますとのことでした。 こまどりの家は、インターネットラジオ ゆめのたねの 神戸局ができ、森崎さんという方が オーナーになり活動し始めます。また ラジオだけではなく、カフェバーや多目的スペースとしての活動が展開されます。こまどりの家で 様々な人が交差して、また他の交差している施設や人とつながって頂き、エリアが少しずつでもリノベーションされてくれば面白いと考えておりまして、微力ながら弊社も携わっていきたいと考えています。

 

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